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於 2004/5/29(土)〜30(日) 小牧パークアリーナ

男子にアテネ五輪代表に選ばれた中野大輔選手(九州共立大)がいるということで、彼の演技に大変注目が集まった今大会。また、女子にもナショナルチームの選手である大阪体育大の椋本啓子選手が加わり、上位のレベルがまた上がった形となった。五輪イヤーにふさわしい興味深い大会であった。

※大変な蒸し暑さの中、選手のみならず、審判、そして観客席の方々は大変な思いをしておられたと思います。お疲れ様でしたm(__)m

まず、注目の中野大輔選手であるが、予想通り、個人総合優勝を果たした。しかし、残念ながら、五輪前の大きな大会としては最後というところで、本調子とはいかなかった。ゆかでは一本目の2回半ひねり〜伸身前宙の後が続かず、最後も月面をやめてかかえ込みダブルにしてしまった。あん馬では2回落下、跳馬では伸身カサマツという本来の技を行わないもので、これら三種目に関しては場内の観衆からも驚きとも落胆とも言えない声が聞こえた。しかし、つり輪では力技も以前よりも若干実施の質が上がったような感じで、そして、見せ場の屈身グチョギー〜車輪〜後方三回宙返りもほぼ着地を止めた。平行棒は月面こそなかったが、得意のティッペルトでは場内のため息を誘うほどの雄大な捌き、そして最後の鉄棒はコバチ、コールマンの放れ技で他の選手のときにはなかったどよめきが起こった。悪い見方をすれば、五輪前に、しかも、代表メンバーの中で期待されているゆかでの失敗を見せてしまったのは不安な要素ではあるが、逆に、こういう時に自分で何が悪かったのかを確認できれば、五輪本番でそれを生かせるかもしれない。

さて、団体戦の争いは、四回生でメンバーを揃え、ミスを抑えて満遍なく演技をする福岡大、中野選手が引っ張るものの一回生がまだ力不足に見えた九州共立大、つり輪で見せた力強い演技が特徴の鹿屋体育大の三チームの争いとなった。

福岡大は今大会9点台が出なかったあん馬で8点台後半を揃えてまずまずのスタート。しかし、鹿屋体育大がつり輪で力強い演技を見せてリードを奪った。九州共立大もゆかで中野選手が技が抜けたことがあったにも関わらず、最高点をマークするなど、順調なスタートを切った。しかし、九州共立大はあん馬、跳馬で、鹿屋体育大は平行棒で点が伸びず、福岡大がその間にミスを抑えてきていたが、鉄棒で落下やコバチで近づき過ぎてミスが出るなどで点が伸びず、三校が混戦となった。

九州共立大がローテーションの関係で最終ローテを残して全演技を終了。そして最終ローテは鹿屋体育大があん馬、福岡大がゆかの演技を行った。鹿屋体育大が8点前半の演技を続ければそのまま逃げ切れた状態であったが、ミスが出てしまい、そして通った演技でも若干の姿勢欠点があって40点を出せずに終了。その間、福岡大は価値点こそあまり高くないものの、無難に演技を終え、見事にこの最終種目で一気に鹿屋体育大を逆転。昨年失ったタイトルを奪回した。

福岡大は、際立ってすごいという演技があまりなかった印象だが、総合力が一番よく、極端に点を落としてしまう選手が各種目でいなかった。どうしても派手な技などに目が言ってしまうが、団体戦ではこういう戦い方が非常に重要であると実感した。しかし、福岡大は四回生でメンバーを固めてきた関係上、来年に向けてのメンバー構成が課題かもしれない。鹿屋体育大は苦手種目で点を伸ばし切れずに残念な結果となったが、演技自体は「よく鍛えてきたなぁ」という印象を持った。九州共立大は一年生が半分いた為、捌き方、線の出し方にまだ改善の余地がある演技が多かった。中野選手の抜ける来年、このメンバーの全体的な底上げがあれば再び優勝できるであろう。

また、個人総合で2位に入った森田将弘選手(中京大)は、つり輪で中水平、十字倒立の実施が群を抜いていて、しかも、中水平から引き上げて十字倒立になるというSE技を入れるなど、構成でも他を圧倒した(全て見れなかったので未確認情報だが、SEがもう一つあったとのこと)。しかし、森田選手でも中野選手とは2点以上の差があり、今後、中野選手以外の選手の台頭が期待される。

最終班の前の女子B班で、関西インカレには、同時期に行われた環太平洋選手権出場の為に参加しなかった椋本選手率いる大阪体育大学が武庫川女子大、鹿屋体育大の演技の前にどのような演技をしてこの二校を脅かすかという点に注目されたが、最初の跳馬で持ち技の関係であまり点数が出ず、その後段違い平行棒では落下を抑え「ギリギリ」のところで耐えた演技を見せた。しかし平均台では落下が出てしまい、椋本選手は二年前の全日本で種目別優勝をしたこの種目で高い点を出しておきたかったが、降りの2回半ひねりで前に崩れてしまった。椋本選手はゆかでも2回半ひねりでミスをしてしまい、個人総合優勝が微妙なところとなった。チーム全体としても9点台がなかなか出ずに、後の二チームを脅かすにはやや不足するものであった。

そしていよいよ最終班。武庫川女子大は、段違い平行棒で着地ミスと車輪系での停滞、倒立で前に倒れるというミスが出てしまう悪いスタートとなった。逆に鹿屋体育大は跳馬で正見こずえ選手の9.500を筆頭に最高のスタートを切った。両校共に、器具系ではミスが続出し、価値点に関しても、平均台ではシリーズ加点が取れないような停滞が目立った。ゆかは鹿屋体育大は正見選手がタンブリング系でも軽々としたこなしで圧倒した力を見せ9.475を出た。両校共に、屈身ダブル、2回半ひねりで立てるかどうかが一つのキーとなっていたが、やや苦しい選手が多かったように思えた。そして、最終種目の跳馬で武庫川女子大が必死の追い上げを見せたものの、僅かに0.1差で鹿屋体育大に及ばなかった。これで鹿屋体育大は二年連続の優勝となり、武庫川女子大はまたも涙を飲んだ。

個人総合争いは、NHK杯にも出場していた椋本、正見選手の二人に、前回優勝の大阪教育大の竹田千重美選手の三選手の争いとなった。苦手の段違い平行棒でどうしても点が伸ばせない竹田選手に比べて、椋本、正見の両選手は全種目で決定的に点を落とす種目がなく、いかにミスを無くすかということがポイントであったが、椋本選手が平均台、ゆかとミスをしてしまい、正見選手が0.275差で優勝した。総合的な力では頭一つ出ていた感じのした椋本選手であったが、非常に残念な結果であった。全日本インカレでは、佐原選手(青森大)や上村選手(立教女子短大)たちとの争いとなるであろうが、今回上位に入った選手たちには西日本勢の意地を見せて頑張ってもらいたい。

選手の持ち技を見る限りでは、トータルで武庫川女子大がリードしているイメージを持っていたが、結局本番でその力を見せないといけないということで、演技の確実性という点で武庫川女子大は残念な結果となった。鹿屋体育大もミスが出ていたが、0.1差という、ある種「運」が見方してくれたような感じであった。全日本インカレでは今回の演技では東日本勢に遠く及ばない状態になってしまうので、両校共に課題を残した試合となった。


荒木雅之(鹿屋体育大)

藤井健司(福岡大)

平木真理子(武庫川女子大)

廣瀬峰晃(鹿屋体育大)

呉屋京辰(鹿屋体育大)

正見こずえ(鹿屋体育大)

益田詩織(鹿屋体育大)

増田功路(福岡大)

森田将弘(中京大)
※つり輪は撮影できませんでした・・・

椋本啓子(大阪体育大)

村下晋平(九州共立大)

中野大輔(九州共立大)

大木亮平(九州共立大)

瀬古敦文(大阪体育大)

竹田千重美(大阪教育大)

寺元佐智子(鹿屋体育大)

山根健蔵(鹿屋体育大)

山崎明日香(大阪体育大)