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キューバとスペインの二カ国がリードしたこの班。キューバはエースのロペスが貫禄で十分な活躍を見せた。跳馬、平行棒は9.6以上であった。それに続く演技が跳馬のドリッグスで、カサマツ一回半ひねりと前転跳び前方伸身二回ひねりを決めて、9.625と9.600を出した。この二本ともにこの点数というのは立派である。また、ラメラス選手が、平行棒でスーパーグシケンを見せてくれた。

スペインはデフェールが欠場していて、その穴は大きかった。ベテランのカルバリョが頑張っていたが、膝にかなり強いサポーター(というか装具)を着けていて、シドニー五輪前に手術したのが未だに大きいようだ。その分、カノ、ビボが各種目のラストを努める役目が多かったが、まだまだ力不足で、点を伸ばせなかった。特に、このチームはつり輪で点を伸ばせず、他のチームに比べて損をしている気がした。

また、バルバドスの選手が、他の種目ではまだまだのレベルであるのに、跳馬だけはユルチェンコ二回ひねりを見せて、9.475を出した。観客からも大きな拍手が起こっていた。

この段階で、スペインは前回の五輪で団体出場を逃したカナダに及ばず四位となった。

<<第四班>>

この班は、前回優勝のベラルーシ、日本との争いが注目されるロシア、五輪の開催地ギリシャ、前回の五輪の開催地オーストラリアと、一気にレベルが上がった。

最初のローテーション、ロシアはクリロフが伸身月面の着地で怪我をし、その後の演技を棄権。いきなり大きな穴を空けてしまった。特に、ネモフが演技しないつり輪に強い彼の存在は、かなり痛手となることが想像できた。その他は、ボンダレンコ、ポドゴルニはまずまずで、ネモフは一本目の新月面もさることながら、二本目の伸身前宙、伸身前宙一回ひねり、伸身前宙一回半ひねり、前方宙返り転の連続でかなり会場を盛り上げた。

ベラルーシは、平行棒で点が出ない状態となっていた。イワンコフは見事に決めてきたが、シンケビッチの屈身ドッペルのミスなど、9点ギリギリの点の連発となった。

ギリシャはマラスがユルチェンコ二回ひねり、ツォラキディスがローチェ、バルムパキスがユルチェンコ二回半ひねりを決めて盛り上がったが、メリサニデスが自分の名前のついたユルチェンコダブルでミス。久々に素晴らしい演技を期待しただけに残念であった。

第二ローテーション、ロシアはホロホルキンが交差ひねりと降りで大きく乱れ、ボンダレンコはロシアンと降りで同じく大きくバランスを崩し、点が伸びなかった。ロシアはクリロフを試技順に入れていたので、この二つの点が団体得点に入ってしまい、またも順位を下げる結果となってしまった。しかし、クリュコフは独特な構成で、両把手上のロシアン720度など、アピールして9.700を出した(ちなみに、ウルジカが9.775、鹿島が9.675であったので、鹿島はクリュコフに負けてしまっている)。そして、ロシアはクリロフの穴を埋めることなく、ネモフは演技をせず、四人の演技となった。

鉄棒のベラルーシは、イワンコフが孤軍奮闘で9.675を出す素晴らしい演技であったが、またも他が伸びず、全く精細を欠く。ギリシャは期待のツォラキディスがわずかにミスが出て、9.250に留まってしまった。画像撮影の為に却って演技を逃してしまったのだが、SVが9.7ということを考えると、日本の鹿島同様、自分のオリジナルの腕支持からのディアミドフでわずかにミスが出たと思われる。

第三ローテーション、ベラルーシがサビツキーが二回のラインオーバーに、終末技でも手を着いてしまった。カスパロビッチは細かいミスが多い状態が続き、そして最後の抱え込み月面で、泡や頭から着地するのではないかという低い着地で、その後アキレス腱を押さえながら立てなくなり、結局ロシアのクリロフに続き、その後の演技を棄権。カスパロビッチに関しては、蹴った瞬間に痛めたのかもしれない。

ロシアも苦戦していた。案の定、クリロフの棄権により空いた大きな穴は、つり輪でも影響したということで、特に、最後のクリュコフは、ナカヤマをするのかというようなところで突然やめて逆懸垂にし、しばらく停滞した後演技を続けたが、点が8.387となり、つり輪で全く点数を稼ぐことができなかった。

ギリシャは、世界チャンピオンのマラスの鉄棒に期待がかかったが、ペガンで手が外れかけ、ダブルスイングとなり、新月面もかなり飛んでしまい、ひやっとしたが、結局9.337に留まり、ギリシャ選手団の応援席から大きなため息が出ていた。

第四ローテーション、ロシアはポドゴルニがローチェでお尻が触れる着地となって9.225となった(※今回、ユルチェンコ二回ひねりと同様、ローチェにも多少甘い採点となっていた)。ボンダレンコはローチェを、ネモフはロンダードから半ひねり前転跳び前方伸身一回半ひねり、クリュコフはローチェを決めたものの着地の問題であまり伸びなかったが、ゴロツツコフがクエルボダブルを決めて9.675を出した。

ベラルーシは完全に勢いがなくなり、イワンコフが何とか9.637で留まったが、他は明らかに苦手種目で、点も出ずに、苦しい戦いとなった。これで、決勝進出もかなり厳しくなった。苦しいのはギリシャも同様で、アトランタの金メダリストのメリサニデスは、月面から切り返し前宙でほぼ背中から着地するなど、まったく精細がなく、残念な演技となった。代わりにバルムパキスが伸身月面、屈身アラビアンダブル半ひねりと大技を決めて、ギリシャ選手団も盛り上がっていたが、最後の月面でミス。ギリシャはことごとく種目別への夢を絶たれてしまった。対照的に、オーストラリア期待のリッツォは、アドラー系を多用した構成で、おなじみのアドラーひねりからのデフもきれいに決めて9.687をマークした。

第五ローテーション、ロシアはクリュコフが棒下宙返りひねりバランスを崩して完全に停滞してしまった。しかし、その後のボンダレンコ、ポドゴルニで持ち直し、最後のネモフで一気に点を伸ばした。ネモフは、棒した宙返り一回ひねり+棒下宙返り+棒下宙返り半ひねり+ビロゼルチェフというシリーズを持って来て、9.687まで点を伸ばした。さすが五輪チャンピオン、決めるべきところを心得ており、また、この種目は過去日本が最後の最後で逆転されてきた苦い思い出のある種目であるくらいなので、そう簡単にはくずれないとまで思えた。

こうしてロシアは、二位のルーマニアは一点ほどの差に縮めて三位になったが、一位の日本とはかなりの差が着いてしまった。クリロフの棄権により、厳しい戦いとなって日本と大差がついたが、決勝の6-3-3のルールでは、実際に彼の棄権が影響するのは今日よりも少ないであろう。ネモフという頼もしい存在が、決勝では必ずいい方向に働くに違いない。特に後半、跳馬からすごい勢いで追い上げたので、この底力を考えると、日本は今日のような細かいミスをも無くしていく必要があることを実感した。

ベラルーシが完全に圏外となったので、残る興味は他にいき、ポーランドのブラニクの跳馬に注目された。一本目の屈身ローチェはよかったものの、二本目の屈身ヨーホンチョルで手を着いてしまい、点を伸ばせなかった。

ちなみに、ギリシャは相当あん馬を苦手としているようで、落下が多く、厳しい状況であった。

最終ローテーション、ポドゴルニがエンドー一回ひねり大逆手の部分で落下してしまったものの、クリュコフ、ボンダレンコとミスなく続き、最後のネモフは、屈身コバチ、伸身トカチェフ+閉脚トカチェフ+トカチェフ+ギンガー、抱え込みコバチと、全く背面系での加点なく、豪快に離れ技のみで加点を取り、本日器具系では最高の9.775をマークした。観客に、久々に喜びのポーズを連発してくれた。

また、ギリシャは、タンバコスが十字倒立系の強さを見せて、9.725を出し、「ようやく」ギリシャの種目別決勝進出の願いを叶えた。


クリロフはいないものの、ネモフのリードで立て直したロシア。

すっかり精細を欠いたベラルーシ。層の薄さを感じた。

日本一位!見えますか??