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この班には、イタリア、ギリシャ、ハンガリーといった日本と五輪出場権を争うであろう国々と、チュソビチナがいるということで、日本には非常に注目された班となった。

イタリアは平均台からであったが、落下がなく、ふらつきだけに留めた。この辺りの執念が団体出場権のボーダーラインに影響するので、ドイツと同様、よく耐えたといってよい。ドイツの得点は伸びなかったが、イタリアは何とか点を留めて、まずまずの点数とした。ゆかでは、ひねり不足で引かれて点数を落とす選手が数名いた。比較的厳しく見られる部分で、9点近くまでは届かなかった。跳馬はベルガメリがユルチェンコ二回ひねりを見せて9.287としたが、ルコーニをを行った選手が二人いて、ひねりきりを見せないと減点が大きいのか、点が伸びず、ペストリーニの9.162とベルガメリの二人だけが9点を超えた。段違い平行棒は、特に低い得点もなかったが、9点は出ずに、結果、団体出場権のボーダーラインと思われた142点を下回る141.258で終了した。

ハンガリーは、跳馬と段違いまでよかったのだが、平均台でミスが続き、ゆかでも立て直すことが出来なかった。KISSを始め、背の高い選手が多く、段違い平行棒の段階から、筋力的に強さを感じないような局面もあったので、平均台でも締まりのないような演技で、技の後でもかなりふらついた。安定性よりもそういう強さが足りないと思えた。

さて、五輪の開催地であるギリシャは、ジュニア上がりの非常に小さな選手を揃えてきたが、試合となると彼女たちの潜在能力が十分発揮されるにはまだ先のように思えた。段違いでは閉脚シュタルダーを多用し、シリーズ加点に繋げていた。ジュニアの試合では、上位の力を見せたものの、やはり世界選手権では経験不足によるミスが出た。平均台ではシリーズ加点を狙っていた部分で停滞が続き、ゆかではラインオーバーを連発した。この辺りを見ると、もう一年待ってこの世界選手権を迎えることができれば・・・と思えた。

さて、この組にはチュソビチナがいたのだが、跳馬以外は構成を変え、ゆかはどちらかというと去年の方がよかったような気がした。段違い平行棒では、ホップターン+車輪一回ひねり+抱え込み月面宙返りでシリーズ加点を狙っていた。しかし、頼もしい大ベテラン選手であると、誰もが思ったと思う。

<<第四班>>

この班は日本女子が登場。同じ班に優勝を狙うロシアと決勝進出を確実にしたいスペイン、そして日本と同様に団体出場を果たしたいというよりも、ウクライナからオスタペンココーチを招聘してどちらかというと団体決勝を果たしたいブラジルがいるという条件の中、果たして昨日のフランス、カナダ、ドイツに追いつくことができるのか、そして、何より悔いの残らない試合になるか・・・?!注目された

跳馬は、水鳥が東アジア大会と同様に、トップで安定した塚原一回ひねりを見せてくれた。彼女の安定制は大変頼もしく、そして得点も8.925と最高のスタートとなった。次の、これまた東アジア大会と同じく佐原が前転跳び屈身前方宙返り半ひねりを決めて、9.075を出し、次に続くユルチェンコ一回半をする選手に繋げた。跳馬では、このユルチェンコ一回半が比較的点が出ていたので期待された訳だが、できれば9.2以上で繋げてほしかったところで、大島が後ろに大きく一歩出るなど、もう一つ元気のない実施隣、石坂の9.125が最高となった。また、竹中がこの世界選手権本番でユルチェンコ一回半を披露してくれて、見事に決めてくれたのには拍手を送りたい。しかし、日本チームとしてはやや貯金が足りないかな?と思えた。この間、ブラジルがゆかで素晴らしい演技を連発し、ゲントでゆかの銀メダルを獲得したイポリトがやや元気がなかったが、ドス・サントスが屈身アラビアンダブルを決めるなど、動きも彼女らしい、サンバというかアフリカンなリズムで観客も大喜びし、9.512を出した。

第二ローテーション、日本の演技はこれまた素晴らしかった。大島がトカチェフで落下したものの、佐原、溝口辺りは離れ技もかなりギリギリで持ち、ひやりとする部分もあったが、逆にそれが雄大さの評価に繋がったのか、得点は悪くなく、溝口は嬉しい9.100を出した。最後の竹中は、大島の落下のプレッシャーを跳ね除けて8.950を出した。この種目、大逆手系でのひねりで倒立経過部分で微妙なバランスとなる中、選手はよく落ち着いていた。ある意味で硬いかな?と思えたのだが、それを耐えた彼女たちは、この一年、本当に成長したと感じた。このローテからロシアが登場だが、アノーシナが着地で大きく乱れ、ホルキナもオリジナルのホルキナで着地が低くなり、二本目のユルチェンコ二回ひねりでもややひねり不足で低くなり、膝への負担が心配されたが特に問題はなかったようだ。また、この大会には出ずにユニバに回ると思われていたザモロドチコワが、ユルチェンコ二回ひねりと、ツカハラ二回ひねりをまとめてきて、ユルチェンコ二回ひねりでは9.525を出した。

第三ローテーション、ここでも日本選手は実に落ち着いていたと思う。溝口からスタートして、大島など、ジャンプ系のシリーズで停滞があって、シリーズ加点が取れなかったところもあったと思うが、それでも立派であった。佐原は、3回ひねりの着地といい、ほぼ完璧な内容で9.4のSVから8.925をマークした。その中、石坂がオノディの部分で落下したのが痛かったが、ここでもまた竹中が踏ん張った。竹中はこの器具系のラストを努めるという重圧を、一番の国際経験者という落ち着きで見事に撥ね退けてくれた。ロシアは、アノーシナがトカチェフで落下、エジョワがギンガーで両足をバータッチ、パブロワがパクの後で詰まってしまい点が伸びず、ホルキナもリチナを抜いた「セーフティ構成」で(車輪一回半ひねりからパク宙返り)9.8のSVで9.45をマークした。スペインのゴメスのゆかは、四回ターンはないが、3回ターンはさすがに一番きれいでポパジャンプにもつなげ、タンブリングもほぼ完璧で9.537をマークした。

いよいよ最後のゆか、日本は目標の142点には一人8.9平均がほしいところで、水鳥が落ち着いてトップを努め、佐原、大島も素晴らしく順調に点を上げたが、SVがそれぞれ9.4と9.5で、9点台には乗らず、目標にはギリギリのところとなった。石坂は、月面がラインギリギリで、二本目のテンポ連続からの二回半ひねりの着地でラインを出ないように・・・と祈っていたが、やはり勢いが比較的強く出てしまった。しかし、他はしっかりと耐えていたので、8.675はキープした。さて、ここで結局全種目ラストを努めた竹中に運命が託された形となったのだが、月面で手を着いてしまう。アップでは決めていたが、腰の痛みがやはりここで影響が出てしまったのかもしれない。これで石坂の点が入って、142点にはギリギリ足りない141.948で、ドイツに負けてしまった。

しかし、選手は本当にいい試合をしたと思う。大過失が出てもそれがカウントされない状態で乗り越えられたのは久々ではないだろうか?選手は、自分たちの持てる力を十分発揮したと思う。しかし、やはりSVの部分が基本的な差となっているのは事実。今後はSVの底上げが次へのステップとなるのはいうまでもない。また、最後のゆかで少し感じたのが、「おお」と思えるのは選曲からもあると思えた。アメリカ人に受けるという観点から、あるいは、日本の体育館とは違う環境であるということを考え、ある意味で「かっこいいい」曲、そして動きを考えないと、せっかくの技が生きないなと思った。今回、佐原のゆかに関しては、一番よかったと思った。

さて、このローテでは、ロシアはエジョワが9.425を出していたが、日本女子の演技に集中していたのでじっくりと見れていない。

最終ローテーション、ロシアはザモロドチコワが曲と構成を変えてきたが、足の怪我で難度はあまり取れてなかった。二回ひねりの部分で思わぬラインオーバーをしていたのが痛かった。また、アノーシナがここれも3回ひねりでしりもちを着くミスをして、経験不足を感じさせた。その他はパブロワが月面で弱冠低いように思えたが9.350、そして最後のホルキナは二回半から前宙一回ひねりでラインオーバーをしてしまったが、構成をまたグレードアップさせて、そして何より、彼女の魅力を十分に感じさせる、そして、体操の演技とは思えない、一つのショーを感じさせる雰囲気で観客も十分に楽しめるものとなった。スペインはモレノが伸身のルコーニ、ゴメスがユルチェンコ一回半ひねりを見せていた。イポリトは構成は上げてきていたがSV9.8で8.800に留まった。

終わってみると、ロシアとスペインが大接戦で145.572対145.409となり、ロシアが辛くも逃げ切った状態となった。しかし、ロシアはアノーシナのミスが大きく、決勝では演技を行う三人が十分に集中していれば今日のような展開にはならないであろう。

そして、日本は、この後、北朝鮮、ブルガリア、イギリスを上回れば五輪に行ける・・・こういう展望で後の班の結果を待つこととなった。


日本同様、団体五輪出場権を逃したイタリア

期待されたジュニアがまだまだのギリシャ

試合自体は非常によかった日本

ゴメスが個人予選トップと活躍したスペイン

とにかくミスの多かったロシア

線の美しいアノーシナ。今大会はミスが多かった。

一気に決勝進出国になったブラジル