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日本が昨年の世界選手権金メダルの中国と同じ班。他に世界選手権5位の韓国も同じで、アジアのトップ三カ国が偶然にも最終班となり、日本にとってはここでしっかりと実力を見せ付けて、決勝での高得点に繋げたいところであった。他にはウクライナが入り、非常にレベルの高い班となった。

第一ローテ

日本は跳馬から。価値点を上げてドリッグスが四人というチームであるが、大過失はなく、特に米田と冨田は減点の少ない実施で、好調なスタートとなった。塚原も価値点を更に上げようしていたことを考えると、跳馬のレベルアップは頼もしかったが、同様に他国もレベルアップし、価値点10点が多く出ている状態となったので、今後、更にレベルアップが必要かもしれない。この間、中国は平行棒で苦しんだ。騰海濱は棒下宙返りから入るディアミドフを3回トライしたがどれも崩れてしまい、3回目は崩れながらも後のベーレにつなげたものの、ここでも支持の段階で回転不足からか落下してしまった。その他、平行棒得意で期待の大きい李小鵬もいつもの流れではない感じで圧倒感が薄れ、9.787に留まった。前の班の点数からすると厳しく見られた感じだ。そして、ツォラキディスに注目された黄旭もその部分での姿勢減点や流れの悪さが出てしまい、9.7をも出せなかった。ゆかの韓国はアジア大会ゆか金メダリストのキム・スンイルが第二タンブリングでしりもちをついてしまった。

第二ローテ

日本は跳馬の流れに乗って平行棒でも勢いがあった。鹿島がベーレの後の支持で崩れてしまったものの、中野が背面車輪〜ティッペルトなど、得意の種目で自分のよさを存分に出して9.800をマークした。冨田は棒下宙返り系でも丁寧な捌きを見せ、着地を止めて中野に次ぐ点数となった。塚原が棒下宙返りひねりでかなり角度が甘くなってしまい減点を受けたが、中野と冨田の点数は、日本の体操が中国を上回ったものであり、大変嬉しかった。中国は鉄棒でもやや波に乗れなかった。出来よりも、本来の質で日本との差を感じ、伸身トカチェフでも十分なさばき出ない選手ばかりであった。頼みの騰海濱ですら、今年の国内選手権で落下し頚部を怪我したということで不安があるのか、伸身トカチェフ(と思えたがちょうど回転の途中だったので本来の伸身イエーガーかも)の後の車輪で腕が曲がり、そして得意のアドラー1回ひねりから〜大逆手エンドーでもややリズムが悪かった。韓国はあん馬で下りでのひねりで難度を上げる部分でひねりを入れれない状態となったり、落下をしたりで点を伸ばせなかった。

第三ローテ

鉄棒は正に日本のハイライトとなった。水鳥がこれでもかという見せ方ではなれ技を連発。その後の中野は姿勢欠点が全くないコールマンなど、質の高さを感じさせ、その上コバチから、車輪を入れてはいるが続けて下りに繋げる熟練性も素晴らしく、高得点を出した。その後、鹿島、冨田、米田まで、着地くらいしか引くところがないと言わせんばかりの演技を続けた。特に冨田の閉脚シュタルダー1回班ひねり、米田の閉脚シュタルダー1回ひねりひねり〜リバルコ〜大逆手車輪1回ひねりは鮮やかで、コバチのときには観衆を大いに印象付けていた。ゆかの中国は、楊威がまたも第二節目の2回半〜前方かかえ込み宙返り〜前方かかえ込み1回ひねりで低い着地となった。そして、他の選手で高得点・・・と思いきや、李小鵬が演技をせず、その代わりに黄旭が短パンとなっていたため「久々にやるのかな」と思ったが、挨拶だけして、演技はしなかった。ということで、中国は4人で乗り越えたことになる。韓国はキム・ドンファが入りの支持回転からの中水平でSEを取り、力強いところを見せた。

第四ローテ

鹿島からの演技であったが、フェドルチェンコになるところで手首でも痛めているのかという崩れ方をした。再度終末技前にそれを入れてきて構成を変えたが平行棒のようにはいかず、点は伸びなかった。冨田も一本目で最後の前方伸身1回半に続けることができず、二つの要素だけにしてしまった。しかし、ここで立て直したのは初代表の中野であった。一本目で僅かに着地が流れてごまかした以外は減点がなく、着地も止まった。そして、塚原は伸身月面を決め、米田は最後の月面まで着地をまとめて2人で高得点をキープし、冨田と鹿島のミスをうまくカバーした。中国はあん馬であったが、李小鵬に続いて金メダルを期待されている肖欽がまさかの落下。下り技に入る直前で、特に何でもないところであったと思われたが、バランスを崩して旋回で膝が曲がり、そのままバランスを崩して落下した。アナハイムでも団体決勝で落下し、種目別決勝でも落下してメダルを逃していただけに、本人のみならずコーチ陣の落胆振りも相当であった。

第五ローテ

あん馬に回った日本は水鳥からであったが、途中で膝を曲げた個所があったにも関わらず、得点を思ったより下げず、日本の勢いを感じた。その後、米田が残念ながら落下してしまい、個人総合予選としては順位を下げたが、その後、塚原がほぼ完璧な出来で冨田につなげ、その冨田も普段不安定気味のウゴーニャンからフェドルチェンコのコンビネーションを落ち着いて決めた。そして世界チャンピオンの鹿島であったが、平行棒、ゆかと失敗が続いて本人としては嫌なムードであったはずだが、見事な集中力で立て直し、シュピンデルの入りから下りのEフロップのコンビネーションまで完璧に決め、9.812を出した。中国は、日本と同様に弱い種目とされているつり輪で、楊威、黄旭はまずまずの出来で点を落とさなかったが、三人目の李小鵬は力技部分で十分に決めることができず、点を落とした。刑傲偉は昨年同様この苦手種目でお演技せざるをえない状況であったが、決めが足りない部分がやはり見られて、点を落とした。平行棒に回った韓国は国内でメダルの期待がかかっているチョ・ソンミンが、棒下宙返り1回ひねりを決めて高得点を期待したいところであったが、得点は9.6台となり、種目別決勝も微妙な位置となった。この採点、次のローテになるまで時間がかかり、審判の中で評価が分かれたようだが、実施減点をしっかり取った結果であり、微妙な点差ではあるが、より美しい出来の選手が評価された形となった。ドイツは鉄棒で期待の若手で、今やすっかりエース格のハンビューヘンが鹿島と並ぶような熟練した捌きで大逆手車輪1回ひねりなどをこなして、着地まで止まって観客の大きな拍手喝采を受けた。これで彼はまた観客の人気者となったようだ(ちなみに彼は今回めがねで演技をしていた)。

第六ローテ

さて、いよいよ日本が苦手としているつり輪の演技となった。米田からの演技であったが、中水平で沿ってしまうところがどう評価されるかで後続の選手に大きく影響するが、思いのほか他の部分の捌きがよく(正確にいうと、個人的にはこれまでの他国の選手よりもよく思えた)、9.6以上をマークし、日本がいかに追い風で演技できているかを感じさせた。その後、水鳥も実施は辛かったが米田同様力技で何とか耐え、そして塚原はしっかりと捌いて高得点を出し、冨田に繋いだ。これまでの流れで、冨田が普通に決めれば9.7は堅いところだが、見事に期待に応えた。中水平の高さ、姿勢の美しさは群を抜いており、9.750を出した。最後には中野が演技をした。技こそ増えたものの、まだ捌きに課題があり、最後に屈身グチョギー〜車輪〜かかえ込み後方三回宙返りを行い、振動系での強さを見せたが着地で後ろに数歩動いてマットから出てしまった。しかし、中野が出場した得意種目で高得点を出し、日本男子の秘密兵器的な存在となった。米田のアナハイムでは演技してないことを考えると、2人は他国にとっては驚異的な存在となったかもしれない。さて、中国は得点を稼げる跳馬であったが、李小鵬と楊威は価値点10点で着地もうまくまとめてきた。李小鵬は二本跳んだが、二本とも価値点10点、しかも、それぞれ今大会他には誰も跳んでない技であり、オリジナリティと技術の素晴らしさを感じた。今回は一本目に前転跳び前方伸身宙返り二回半ひねりを持ってきて、二本目が自分の名前のついているロンダードひねりからの前方伸身二回半ひねりであった。楊威は国内でもやや不安であったロペスを決めた。他は刑傲偉がドリッグスを決めた。


この結果、日本はアメリカに二点弱の点差をつけて見事にトップに立った。そして中国はルーマニアにも及ばずに4位で決勝を迎えることとなった。ウクライナがロシアを上回って5位、韓国は7位となった。しかし、ウクライナから韓国まではわずか0.412差で、決勝ではどういう展開になるか、楽しみになった。そして、最後の決勝進出国は、ハンビューヘンの活躍でドイツがフランスを抑えて入ってきた。ドイツは昨年はベラルーシと最後の五輪団体枠を争い、僅差で勝ち12位に入ったのだが、今大会ではついに決勝進出を果たした。

個人総合予選はポール・ハムが首位をキープ。韓国のヤン・テヨンが2位に入り、冨田が3位となった。米田はあん馬のミスが影響し、10位に留まった。

団体決勝は4位以内か、それ以下かによって最初のスタート種目が異なる。中国の4位という結果は、常に日本の前に、いや、上位四カ国の最初に中国が演技をするということであり、例え先に中国が高得点を連発しても、日本は落ち着いて自分たちの演技を行わないといけないということとなった。しかし、今の中国は安定性に不安があり、日本に歩があるのは明らか。是非この最高の波に乗り続け、決勝でベストを出せるように頑張ってもらいたい。



金メダルの実力があることを証明した日本

ミスが出たり点が伸びない王者・中国

予選は七位に留まった韓国

跳馬と平行棒で高得点を挙げた李小鵬