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ネモフの演技は、放れ技が合計六つ、これまで類を見ない、エンターテイメント性を感じる演技で会場が大いに盛り上がった。しかし、着地でいつも通り前に一歩出てしまった。単純にそこだけで9.8まではいかないと思えたが、案の上、得点は9.725に留まった。すると、そこで観客から大きなブーイング。それが起こってもよくある話、特に一般にわかりやすい演技でトップに立てないことで起こったと考えれば普通と思えたが、今回はそんな話では済ませられなかった。まずいつになったら収まるのかというくらい長く、時間が経てば経つほどより大きくなる。挙句の果てには観客席の多くが親指を下に下げて審判に大いに不満を表した。いったん次のポール・ハムの名前が掲示板に出ると「その採点でいいと思うのか!」とでも言わんばかりにどうしようもないくらいの音量でブーイングが続いた。私の記憶の中では最近ではほとんどないものであり、しかも、地元ギリシャの選手が絡んだ訳ではないので、その異様なムードは理解し辛いものがあった。かつて、モスクワ五輪のコマネチの演技で20分の中断があったことを思い出すが、さすがに五輪、何かドラマが起こってしまうのだろうか。

得点的には技巧派に点を上げたいと思われるマレーシア、カナダの審判がネモフの得点を下げ、それが決定点に影響。それはそれで認めないといけないと思うのだが、観客がそれを認めず、そして信じられないことに、いつの間にか得点掲示板にネモフの得点が9.762に上がったのが表示された。さきほど点を下げていた二人の審判が点を上げたのだ。具体的に言うと、マレーシアは一気に0.15上げて9.6→9.75に、カナダは9.65→9.75にした。点を上げたことに対する「何だよそのいい加減な採点は?!」というものなのか、あるいは「トップじゃないじゃないか!」という声なのか、再度ブーイングが起こり、正にエンドレス状態となった。

ネモフも最初は下でじっと採点への不満(あるいは自分の演技?)を見せていたが、次第に次のポール・ハムがなかなか演技を始めることができないことで「まあまあ」という仕草を見せ、最後にはポディウムに上がって「もういいです、ありがとうございました」というような感じの動きをして観客に挨拶をしていた。そこで観客から大きな拍手が起こり、ようやく静まった。正直言って、ブーイングが起こったこと、そして最後のネモフの仕草を見ると、彼の体操選手としての魅力が本当に世界中のファンに伝わっていると思われた。ホルキナといい、ネモフといい、技だけではない何かを兼ね備えることの魅力が、体操人気には必要であると思えた瞬間であった。

 



最初に出た点数。マレーシアは非常に厳しい・・・。

身を乗り出してブーイングする観客。


ブラジル応援団からもこのような激しいブーイング。

ロシアコーチ陣は感謝の拍手か、さらに得点を上げろというものか分からないが、拍手をしきりにしていた。

再度出た点数はマレーシア、カナダが他の審判に合わせた形に・・・。

激しいブーイングに「抑えて抑えて!」という仕草を見せたネモフ。